「世界一決定戦」の名を借りた“大リーグの市場拡大” MLBを利するだけのWBCは止めたほうがいい
――「“真の勝者”はMLB」という現実
WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は、3月24日(日本時間)の優勝決定戦で日本が韓国を
破って優勝し、幕を降ろした。
大会期間中、NHKから民放にいたるまで、明けても暮れてもWBCの「侍ジャパン」を盛り上げる
報道に狂奔した。その異常さに、いい加減うんざりしていたので終幕してほっとしている。その一方で、
異常な扇動報道によって、視聴率もまた異常な高さを記録し、テレビの影響力の恐ろしさを改めて思い
知らされた。
「世界一決定戦」という欺瞞
「侍ジャパン」の情報を垂れ流し続けることで、WBCの本質的な問題などについて視聴者の思考を
停止させる、
脳科学でいう「心脳コントロール」にテレビは成功した、ともいえる。たとえば、WBCが「世界一決定戦」
だと思い込まされたのではないだろうか。すこしでも疑問を抱かせる情報があれば、それが欺瞞である
ことに気づいたはずなのだが。
主催がWBC株式会社(MLB・大リーグ機構と大リーグ選手会の共同出資)であること、世界から
16チームしか出場していないこと、MLB単独で決めたルールや組み合わせが変則的であること、
アメリカチームは有力選手を欠いていること、これらの点からみても「世界一決定戦」とはほど遠い。
それにもかかわらずテレビは、視聴者が「なぜ?」「どうして?」という問いを発しないように、そうした
情報を一切流さなかった。それこそ、テレビの心脳コントロールによる大衆操作の典型的な手法である。
それゆえに、日本代表チームの健闘ぶりには敬意を表するにしても、テレビに操られて大会の本質
について無知なまま欺瞞を受け入れ、「2大会連続世界一!」と大騒ぎするのは愚かだというしかない。
多額の日本マネーがMLBの懐に・・・
大会を通して白けてしまったことがいくつかあった。1つは、変則的な組み合わせの結果、優勝を決める
までに日本対韓国戦が5試合にもなったことだ。また、先にも記したように、地元アメリカ代表チームが
有力選手をそろえられず、不甲斐なかったのもその1つだ。
アメリカ代表チームの編成がなぜそうなってしまったのだろうか。
大会を創設したとはいえMLBに代表選手を決める権限はなく、各球団や選手の意向が最優先され
たのだ。新聞報道によると、アメリカではWBCをオープン戦の1つと捉えている人がかなり多く、関心も
低かった、という。それゆえ、アメリカ代表チームが不甲斐ない試合をしても大騒ぎすることもなかった
のだろう。
もともと、WBCを創設したMLBの狙いは、“大リーグの市場を世界的に拡大すること”にあり、アメリカ
代表チームの勝敗を度外視していた。
また、3月7日付朝日新聞の報道によると、大会による収入のすべてがWBC株式会社に入り、そこから
各国に配分される仕組みになっており、第1回の例だとアメリカへの配分は、断然多く66%(MLB、選手
会各33%)、NPB(日本プロ野球機構)には約13%だった。そして記者は、こう記す。
「地域別の一番の大口スポンサーは日本だ。大会関係者は『収入の半分以上は日本マネーになるだろう』
と言う。各地とりわけWBC人気が高い日本から吸い上げたお金をMLBが持っていく構図が、より濃くなった
かっこうだ」
WBCを通じて、ビジネスに長け、抜け目のない“MLBの本性”が曝け出されたわけである。
MLBのコミッショナーは、3月開催に反対する球団オーナーたちの声を受け入れず、「次回から出場
チーム数を増やす」と、あくまでも強気を貫く構えのようだ。
真の国際大会のあり方を徹底的に議論すべき
「将来的に日本も資金を出し、共催のかたちを考えなければならない」というNPB・加藤良三コミッショナー
の談話が3月25日付朝日新聞に載った。WBCの継続を前提にしてNPBもMLBと対等の立場に立つ、
という発想は、日米関係しか頭にない加藤氏の視野の狭さ象徴しているといえよう。
野球は、2008年北京オリンピックを最後に競技種目から除外された。5大陸での普及度からみて野球が
除外されるのは当然であろう。ただ、IOC(国際オリンピック委員会)は、普及度ばかりでなく、大リーグが
最有力の選手で構成したドリームチームを出場させないことも除外の理由に上げている。
つまり、そのようなドリームチームが出場しなければ見せ物として面白くなく、関心を集めない、というのだ。
国際野球連盟は、オリンピックへの復活を目指して活動しているものの、その鍵を握るMLBの消極的
姿勢によって苦戦を強いられている。MLBは、野球のヘゲモニーに固執してオリンピックに対抗しており、
容易にはIOCと妥協しないであろう。
国際野球連盟は、オリンピックにこだわるだけでなく、自ら主催している世界選手権の充実をはじめ、
5大陸での普及のために加盟国の知恵を結集すべきであろう。
野球のプロ化は、世界的にある程度進むかもしれないが、限界があることも間違いない。国際野球
連盟が知恵を集めなければならないのは、「見るスポーツ」としてではなく、「doスポーツ」として野球を
一般の人たちに普及させるにはどうすればいいか、ということである。
WBCでは、そうした野球の普及には繋がらない。というより、むしろ阻害要因にさえなるといえよう。
とにかく、MLBの単独行動主義によるWBCを止めさせ、国際野球連盟加盟組織をはじめ、MLB、NPB
なども含めて国際的に協議する場をつくり、どのような大会が望ましいかを徹底的に議論すべきではない
だろうか。
谷口源太郎(スポーツジャーナリスト)
ダイヤモンドオンライン /)
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/ i f ,.r='"-‐'つ____ こまけぇこたぁいいんだよ!!
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