今年3月初めまでに対ドルで35%下落した。対円では55%もの下落率となった。その影響は
様々な形で出ている。
2月末、旅行会社のエイチ・アイ・エスは 2008年11月〜2009年4月期の業績について、韓国
旅行の取り扱いが急増、為替益もあり、経常利益予想をこれまでの17億円から23億円と
上方修正すると、株価が急伸した。
日本から高級ブランド品の買い物ツアーがさかんだそうだが、それだけではない。分かりやすい
例がダイソーの100円ショップだ。韓国では“1000ウォンショップ”として知られる。1000ウォン
商品が人気で、韓国内で380店が展開されている。その均一価格が日本円に換算すると昨年
夏に 110円ぐらいだったのが、今は60円だ。恐らく、世界23カ国・地域で同社が展開している
中で一番安い。
3月3日付コリア・タイムズ紙は「YEN Welcome」という見出しの記事を掲載した。そこには、
大型スーパー・ロッテマートのソウル駅店では、観光客のおかげで今年1〜2月の海産物の
売り上げが前年同期比で127%増、健康茶が112%増、コチジャンが54%増と記されている。
免税店だけでなく、食品売り場にまで日本人客が押し寄せ、ロッテグループ全体の1〜2月売り
上げは同11.8%増を記録、コンビニやレストランでも同様な繁盛ぶりだそうだ。
韓国マネーも日本に流入
ウォン安でジャパンマネーが韓国に向かっている図式だが、実はその逆も目立つように
なっている。昨年11月に韓国の証券会社が日本の中小証券会社であるジーク証券を買収した。
今年は2月だけでも2件、上場会社を巡る韓国マネーの動きが見られた。
1つは、デジタルコンテンツ配信事業のデジタルアドベンチャーが、著名韓流スターのペ・
ヨンジュン氏のコンテンツ会社BOFインターナショナルと合併すると発表、デジタル社の株価が
急騰した。BOFはぺ氏が所有する韓国の上場投資会社の子会社で、合併会社にはペ氏側が
経営参加の見込みとされる。
もう1つは、金融情報会社のフィスコが先月、19日連続高の記録を作ったこと。これも韓国
マネーがきっかけとされる。同社は港区に住む韓国名の男性が保有株比率10.25%の大株主と
なったと発表。関東財務局に提出された大量保有報告書で保有目的が「経営参加」(その後
「安定株主としての保有」に変更)と書かれており、思惑がさらに広がっている。
日本ブームが通貨安を乗り越える
しかし、通貨の安い国から通貨の高い国に逆流するように韓国マネーが迫るのはなぜか。
大きな理由は通貨の強い国での資産保全が目的ではなかろうか。また、日本のアニメや
Jポップの浸透など、日本文化に対するアレルギーが少なくなっていることも影響していよう。
最近では日本酒ブームが起き、清酒の輸入が昨年は前年比44%増の1866トンと急増している。
韓国で販売されている投資信託でも日本株の保有を増やす動きがあるという。
現時点では、底打ち感が乏しい
そこで今後のウォン相場だが、対ドルでは11年ぶりの安値をつけ、対円では過去最安値と
なったがまだ底打ち感に乏しい。資金の海外流出が大きくなっているためだ。
国際収支では、昨年は資本収支が過去最大の509億3000万ドルの赤字、つまり資金流出と
なった。しかも、そのうちリーマン破たん以降9月からの4カ月だけで461億9000万ドルを占める。
2月27日に発表された今年1月分は、この資本収支は48億6000万ドルの黒字、つまり流入に
転じたが、経常収支が13億6000万ドルの赤字に転落(前月は8億6000万ドルの黒字)、これを
埋める面もあった。
中央銀行の韓国銀行は発表文の中で、流入の理由として韓国の銀行がオフショアで債券を
発行して得た資金のせいとした。また、国内投資家による海外投資の引き揚げも理由とした。
いずれも一過性の動きと見られ、資金流出に歯止めがかかったのではなさそうだ。
さらに問題なのは、今年1月に経常赤字となったのが貿易赤字のせいであり、ウォン安でも
輸出が前年同月比33%も減った点だ。家電、自動車など、韓国企業が得意とする先進国
向け耐久消費財の市場が冷えている。それもあってか、ここにきて一部で「3月危機説」が
出回っている。日本企業が3月期決算に合わせて資金を引き揚げるとの見方からだ。
「1ドル=2000ウォンがあり得る」
2月19日、韓国銀行の李成太総裁は、記者会見で「3月危機説は日本企業の決算に関連する」
と言及した。しかし、「国内に流入したジャパンマネーの規模は大きくなく、ほとんどが日系金融
機関の営業資金のため直ちに引き揚げられるものではない」とし危機説を否定した。実際、
韓国国内に金融に関してそれほどの危機感は出ていない。
外貨準備が2000億ドルと世界6位の規模で、通貨危機当時の1997年末の10倍もあるからだ。
短期の対外債務が膨らんではいるものの、韓国銀行はわざわざホームページに「韓国経済に
対するQ&A」のコーナーを設け、国内銀行が今年、支払わなければならない対外債務は480億
ドルに過ぎないと答えている。
また、「財政は健全性を保てるのか?」との問いには、「2007年末の政府債務はGDP(国内
総生産)の33%だが、諸外国と比べて低い」と自答している。経済協力開発機構(OECD)加盟
30カ国平均では75%。米国は63%、日本は170%との指摘だ。
もっとも、3月危機は回避しても展望が開けているわけではない。先の記者会見で韓国銀行
総裁は「世界経済が低迷する中で、韓国だけが回復することは厳しい」とし、「根本的な解決
策は、世界経済全体で探さなければならない」と述べた。ウォンに対する極端な弱気筋もある。
投資銀行INGグループのアジア地域チーフエコノミストは、3月3日の地元紙に「政府は
外貨を使う為替介入に慎重にならざるを得ない」として1ドル=2000ウォンがあり得ると
述べた。となれば、ダイソーの1000ウォンショップでは40円台で品物が買えるわけだ。
ジャパンマネーはますます隣国の消費市場を助けることになるのかもしれない。内需を
膨らませたい日本経済には、新たな悩みとなる。
日経ビジネス
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